この記事では、「電話認証って、よく聞くけど具体的に何なの?」という基本的な疑問から、その必要性、種類、導入のメリット・デメリット、そして自社に最適なサービスの選び方まで、企業の担当者様が知りたい情報を網羅的に、そして専門用語をできるだけ使わずに分かりやすく解説していきます。
この記事を読み終える頃には、電話認証がなぜ必要なのか、そして自社のセキュリティをどう強化すれば良いのか、その具体的な道筋が見えているはずです。それでは、さっそく見ていきましょう。
そもそも「電話認証」とは?今さら聞けないキ・ホ・ンの「キ」
電話認証とは、一言でいえば「利用者が持っている電話番号に電話する、もしくは指定の電話番号に電話をしてもらい、本人であるかを確認する仕組み」のことです。
一般的な流れは以下の通りです。
インバウンド方式
- サービス側が用意した電話番号に対して利用者が電話
- サービス側は着信した電話番号をシステムで確認
- 電話番号が一致すれば、本人確認が完了
アウトバウンド方式
- サービス側が利用者に対してシステムから自動で架電
- 利用者は電話に応答する
- 電話番号が一致すれば、本人確認が完了
皆さんも、新しいアプリに登録したり、ネットで買い物をしたりする際に、携帯電話の番号を入力し、電話がかかってきたり、指定の電話番号に電話をした経験はありませんか?あれこそが、電話認証の最も代表的な例です。
なぜ今、電話認証が重要視されているのか?
背景には、従来のIDとパスワードだけの認証方式が限界を迎えている、という事実があります。
- パスワードの使い回し
- 多くの人が、覚えきれないという理由で複数のサービスで同じパスワードを使い回しています。そのため、一つのサービスから情報が漏洩すると、芋づる式に他のサービスでも不正ログインされてしまう危険性があります。
- 単純なパスワードの設定
- 「123456」や「password」といった推測されやすいパスワードを設定しているケースも後を絶ちません。
- 巧妙化するサイバー攻撃
- 企業から流出したIDとパスワードのリストを使って不正ログインを試みる「リスト型攻撃」など、攻撃の手口は年々巧妙になっています。
IDとパスワードという「知識情報(本人が知っていること)」だけに頼ったセキュリティは、もはや砂上の楼閣と言っても過言ではありません。そこで、本人が所有しているスマートフォンや電話といった「所有物情報(本人が持っているもの)」を組み合わせることで、セキュリティを飛躍的に高める「多要素認証(MFA)」が不可欠となりました。
MFAの3要素:
- 知識情報(知っているもの)=ID・パスワード
- 所有物情報(持っているもの)=電話番号・スマホ
- 生体情報(身体的な特徴)=指紋・顔認証
電話認証は、この多要素認証を実現するための、最も手軽で効果的な手段の一つとして、今や多くの企業にとって「当たり前」のセキュリティ対策となりつつあるのです。
2. 電話認証の2大方式|通電方式とPIN読上げ方式
電話認証と一括りに言っても、その方法にはいくつかの種類があります。ここでは、代表的な2つの種類「通電方式」と「PIN読上げ方式」について、その仕組みとメリット・デメリットを分かりやすく解説します。
① 通電方式
最もポピュラーで、皆さんも一度は利用したことがあるであろう方式です。
【仕組み】
- ユーザーがサービスにログイン、または会員登録を行う。
- サービス側が、登録された携帯電話番号宛にシステムで自動発信する。
- ユーザーは電話に応答する。
- 電話番号が一致すれば認証完了。
【メリット】
- 普及率の高さ
- 電話番号があれば携帯電話だけでなく固定電話でも認証できるため多くのユーザーが利用できます。特別なアプリのインストールも不要です。
- 手軽さ
- ユーザーは電話に応答するだけなので、直感的で分かりやすいのが特徴です。
- 導入のしやすさ
- 多くのサービス事業者がAPIを提供しており、既存のシステムに比較的簡単に組み込めます。
【デメリット】
- 電波が届かないリスク
- 電波の悪い場所にいると電話がかからない場合があります。
- 格安SIMの一部では非対応
- データ通信専用のSIMカードなど、電話機能がない契約プランでは利用できません。
- 海外利用時の注意
- 海外のユーザーに発信する場合、通信キャリアによっては不安定になったり、追加料金が発生したりすることがあります。
② PIN読上げ方式
通電方式よりも高セキュリティで複雑な方式です。IVR(Interactive Voice Response:自動音声応答システム)を利用します。
【仕組み】
- ユーザーがサービスにログイン、または会員登録を行う。
- サービス側が、登録された電話番号(携帯・固定問わず)に自動で電話をかける。
- 自動音声ガイダンスが流れ、認証コードを口頭で伝える。
- ユーザーは聞き取った認証コードを、サービスの画面に入力する。
- コードが一致すれば認証完了。
【メリット】
- 対応範囲の広さ
- 固定電話にも対応できるため、スマートフォンを持っていない高齢者層など、幅広いユーザーをカバーできます。
- SMS不達時の代替手段
- SMSが届かない場合のセカンドオプションとして用意しておくことで、ユーザーの離脱を防げます。
- 視覚障がい者への配慮
- 画面の文字を読むのが困難な方でも、音声でコードを確認できます。
【デメリット】
- 聞き間違いのリスク
- 周囲が騒がしい場所では、認証コードを聞き間違えてしまう可能性があります。
- 電話に出られないと認証不可
- 会議中や移動中など、すぐ電話に出られない状況では認証を完了できません。
- ユーザーの心理的ハードル
- 知らない番号からの着信に抵抗を感じるユーザーも一部にいます。
【どちらを選ぶべき?】 基本的には、手軽で普及率の高い通電方式を第一の選択肢とし、よりハイリスクな手続きや重要な場面でPIN読上げ方式を代替手段として用意しておくのが、最もバランスの取れた構成と言えるでしょう。
なぜあなたの会社に電話認証が必要なのか?導入の絶大なメリット4つ
「仕組みは分かったけど、コストをかけてまで導入するメリットって本当にあるの?」 そう思われる担当者様もいらっしゃるかもしれません。しかし、電話認証の導入は、コストを上回る大きなメリットを企業にもたらします。
メリット1:鉄壁のセキュリティ!不正アクセス・なりすましを強力に防ぐ
これが最大のメリットです。ID・パスワードが万が一漏洩してしまっても、攻撃者はユーザー本人の電話機を手に入れない限り、認証コードを知ることができません。これにより、悪意のある第三者による不正ログインや、なりすましによる被害を劇的に減らすことができます。
特に、顧客の個人情報や金銭が関わるサービス(ECサイト、金融サービス、会員制サイトなど)においては、電話認証はもはや「推奨」ではなく「必須」のセキュリティ対策と言えます。
メリット2:「この会社は安心だ」顧客からの信頼と満足度が向上する
セキュリティ対策に力を入れている企業だという姿勢は、お客様に大きな安心感を与えます。「自分の情報はしっかり守られている」と感じることで、サービスへの信頼が高まり、結果として顧客満足度の向上、そして長期的なファン(ロイヤルカスタマー)の育成に繋がります。
逆に、セキュリティが甘いという印象を与えてしまうと、お客様は不安を感じて離れていってしまいます。
メリット3:迷惑行為や不正利用をシャットアウト!サービスの健全化
誰でも簡単に大量のアカウントを作成できる状態だと、スパム投稿やキャンペーンの不正利用、荒らし行為などの温床になりがちです。
電話認証を導入すれば、1つの電話番号につき1アカウントといった制限をかけられるため、こうした迷惑行為を目的とした使い捨てアカウントの大量作成を効果的に防ぐことができます。これにより、サービスの健全性が保たれ、一般のユーザーが快適に利用できる環境を守ることにも繋がるのです。
メリット4:コンプライアンス強化と企業ブランドの保護
個人情報保護法の改正など、企業に求められるセキュリティレベルは年々高まっています。電話認証のような適切な本人確認手段を導入していることは、こうした法令遵守(コンプライアンス)の観点からも重要です。
万が一の情報漏洩事故は、金銭的な損害だけでなく、企業のブランドイメージを大きく毀損し、事業の継続すら危うくする可能性があります。電話認証は、そうした経営リスクを低減させるための重要な投資なのです。
導入前に知っておきたい!電話認証の注意点・デメリット
もちろん、良いことばかりではありません。導入を検討する上で、知っておくべき注意点も正直にお伝えします。
デメリット1:導入・運用コストがかかる
電話認証サービスを利用するには、当然ながらコストが発生します。料金体系はサービス会社によって様々ですが、一般的には以下の費用がかかります。
- 初期費用: 導入時に発生する費用。
- 月額基本料金: 毎月固定でかかる費用。
- 従量課金: 認証1件あたり、音声通話1分あたり、といった形で利用量に応じてかかる費用。
自社のサービス規模や認証の頻度を考慮し、どの程度のコストがかかるのかを事前にシミュレーションしておくことが重要です。
デメリット2:ユーザーの手間が増え、離脱に繋がる可能性
ログインや登録の際に一手間増えることになるため、それを面倒だと感じたユーザーがサービス利用をやめてしまう(離脱する)リスクはゼロではありません。特に、購入手続きの最終段階などで認証を求めると、いわゆる「カゴ落ち」の原因になることも。
この対策としては、セキュリティが特に重要な場面(パスワード変更、個人情報変更、高額決済時など)に限定して認証を求める。UI/UXを工夫し、ユーザーが迷わずスムーズに認証を完了できるような分かりやすい画面設計にする。 といった配慮が求められます。利便性とセキュリティのバランスを取ることが、担当者の腕の見せ所です。
デメリット3:遅延リスク
電話は100%確実にかかるわけではありません。キャリア側の問題やユーザー端末側の設定、電波状況など、様々な要因で架電できなかったり、認証するのが遅れたりする可能性があります。
「認証コードが届かない!」という問い合わせは、カスタマーサポートの負担増にも繋がります。このリスクを軽減するためには、SMSと音声認証を併用し、ユーザーが代替手段を選べるようにすること、「コードが届かない場合はこちら」といったFAQやガイドを分かりやすく用意しておく。 といった対策が有効です。
【法人向け】失敗しない!電話認証サービスの選び方5つのポイント
「よし、うちも電話認証を導入しよう!」と決断した担当者様。次にぶつかるのが「どのサービスを選べばいいの?」という壁です。ここでは、法人向けサービスを選ぶ際に必ずチェックしたい5つのポイントをご紹介します。
- セキュリティの信頼性
- 当然ですが、セキュリティを強化するためのサービスですから、そのサービス自体のセキュリティが強固でなければ意味がありません。第三者機関によるセキュリティ認証(ISMS認証など)を取得しているか、通信は暗号化されているか、24時間365日の監視体制はあるか、などを必ず確認しましょう。
電話には「電話事業者認証機構 ETOC」という電話専門の認証機構などもあります。
- 当然ですが、セキュリティを強化するためのサービスですから、そのサービス自体のセキュリティが強固でなければ意味がありません。第三者機関によるセキュリティ認証(ISMS認証など)を取得しているか、通信は暗号化されているか、24時間365日の監視体制はあるか、などを必ず確認しましょう。
- 導入のしやすさ(API連携)
- 既存のシステムにスムーズに組み込めるかは非常に重要です。多くのサービスはAPI(Application Programming Interface)経由で機能を提供しています。仕様書(ドキュメント)が分かりやすいか、開発者向けのサポート体制は整っているか、などをチェックしましょう。トライアル期間があれば、実際に試してみるのが一番です。
- 料金体系の分かりやすさと柔軟性
- 自社の利用規模に合った、無駄のない料金プランを選べるかを確認します。初期費用や月額固定費の有無、認証1件あたりの単価などを複数のサービスで比較検討しましょう。「最初はスモールスタートで、事業の成長に合わせてプランを柔軟に変更できるか」という視点も大切です。
- 通信品質と安定性(到達率)
- 特に電話認証で「電話がかかるか」がサービスの品質を決めます。国内の主要キャリア(ドコモ、au、ソフトバンク、楽天モバイル)に安定して発信できるか、海外への発信も視野に入れるならその品質はどうか、といった実績を確認しましょう。PIN読上げ方式の場合は、音声のクリアさもポイントです。
- サポート体制の手厚さ
- 導入時の技術的なサポートはもちろん、運用開始後にトラブルが発生した際に、迅速かつ的確に対応してくれるかも重要な選定基準です。平日の日中しか対応していないのか、24時間365日対応してくれるのか。日本語でのサポートは受けられるのか。こうした細かな点が、いざという時の安心感に繋がります。
6. こんな場面で大活躍!電話認証の具体的な活用シーン
最後に、電話認証が実際にどのような場面で活用されているのか、具体的な事例を見ていきましょう。自社サービスでの活用イメージを膨らませてみてください。
- 金融サービス(銀行・証券・Fintech)
- 新規口座開設時の本人確認
- インターネットバンキングへのログイン
- 振込や送金など、資金移動時の最終承認
- ECサイト・通販
- 新規会員登録時の本人確認
- パスワード再設定時
- 高額商品の購入時の不正利用防止
- Webサービス・SNS
- アカウント作成時の不正登録防止
- ログイン時のなりすまし防止
- チケット予約サイト・旅行サイト
- 人気チケットの不正な買い占めや高額転売の防止
- シェアリングサービス(カーシェア、民泊など)
- 利用者の本人確認による、利用者・提供者双方の安全性確保
このように、ユーザーの本人確認が重要となる、ありとあらゆるサービスで電話認証は活躍しています。
まとめ:電話認証は、未来の信頼を築くための「必要投資」

今回は、企業のセキュリティ対策の要となる「電話認証」について、基礎知識から選び方までを詳しく解説してきました。
- 電話認証とは、 電話番号を使って本人確認を行う仕組み。
- ID・パスワードだけの認証は危険。 多要素認証の一つとして電話認証が不可欠。
- 通電方式とPIN読上げ方式が主流。 それぞれにメリット・デメリットがある。
- 企業側のメリットは絶大。 不正アクセス防止、顧客信頼度の向上に繋がる。
- サービス選びは、 セキュリティ、料金、安定性、サポート体制を総合的に判断。
もはや、電話認証は一部の先進的な企業だけが導入する特別なものではありません。お客様の大切な情報を預かり、安全なサービスを提供するための「当たり前のインフラ」となりつつあります。
「うちにはまだ早い」「コストが…」と先送りにしている間に、競合他社は着々とセキュリティ対策を進め、顧客からの信頼を勝ち取っているかもしれません。そして何より、セキュリティ事故は待ってくれません。
この記事が、貴社のセキュリティレベルを一段階引き上げ、お客様からの信頼をさらに強固なものにするための一助となれば幸いです。