高い開封率を誇るSMSですが、ただ送るだけではその効果を最大限に引き出すことはできません。企業のマーケティングご担当者様の中には、こうしたお悩みをお持ちの方も多いのではないでしょうか。
この記事を最後までお読みいただければ、SMS配信の「なんとなく」を「データに基づいた確信」に変え、クリック率やお客様の反応を飛躍的に高めるノウハウが身につきます。ぜひ、貴社のビジネスを加速させる次の一手としてお役立てください。
なぜ今、SMSにA/Bテストが不可欠なのか?
A/Bテストの具体的な話に入る前に、なぜ今、SMS施策においてA/Bテストが重要視されているのかをご説明します。
ご存知の通り、SMSはメールマガジンなど他の媒体に比べて、圧倒的に高い開封率を誇ります。携帯電話の標準機能であり、受信すればロック画面に通知が表示されるため、お客様の目に触れる機会が非常に多いのが強みです。
しかし、マーケティングの目的は「見てもらうこと」で終わりではありません。その先にある「行動してもらうこと」、つまり、リンクをクリックしてもらったり、クーポンを利用してもらったり、店舗へ足を運んでもらったりすることが最終的なゴールのはずです。
ここに、A/Bテストの重要性があります。
多くの企業がSMS配信を始めた今、「ただ送るだけ」では競合との差別化は困難です。お客様は日々多くの情報に触れているため、自分に関係ない、魅力的でないと感じたメッセージはすぐに閉じられてしまいます。
A/Bテストは、こうした状況を打破するための強力な武器です。
- なんとなく良いだろうという感覚的な判断
- とりあえず前回と同じという思考停止の配信
これらをやめ、データという客観的な事実に基づいて「本当に成果の出るSMS」を見つけ出す科学的なアプローチ、それがA/Bテストなのです。コストをかけずに、今ある配信リストの効果を最大化できるため、費用対効果を重視するすべての企業にとって必須の施策と言えるでしょう。
A/Bテストとは?基本を解説
では、A/Bテストとは具体的にどのようなものなのでしょうか。ここでは、その仕組みと目的をシンプルに解説します。
A/Bテストの仕組み
A/Bテストは、その名の通り「Aパターン」と「Bパターン」の2つの選択肢を用意し、どちらがより良い成果を出すかを比較(テスト)する手法です。
例えば、あなたがレストランの新しいランチメニューを開発しているとします。デミグラスソースのハンバーグ(A)と、和風おろしソースのハンバーグ(B)、どちらがお客様に人気が出るか分かりません。
そこで、一部のお客様にだけAとBの両方を提供し、どちらの注文数が多かったかを調べます。もしBの和風おろしソースの方が人気だと分かれば、正式なランチメニューとして採用できますよね。SMSのA/Bテストもこれと全く同じです。
配信したいお客様全体(全リスト)のうち、ごく一部のお客様をランダムに2つのグループに分けます。
- グループ1には、AパターンのSMSを送信
- グループ2には、BパターンのSMSを送信
そして、一定期間が経過した後に「どちらのパターンのSMSがより多くクリックされたか」を比較します。その結果、より成果の高かったパターンを、残りの大多数のお客様に配信する、という流れです。これにより、勘に頼ることなく、最も効果的なメッセージを届けることが可能になります。
A/Bテストで分かること
A/Bテストを行うことで、具体的に以下のような指標を改善していくことができます。法人のお客様がSMSマーケティングで重視すべき、代表的な3つの指標をご紹介します。
- クリック率(CTR:Click Through Rate)
- 配信したSMSに含まれるURLが、どれくらいの割合でクリックされたかを示す指標です。SMS施策において最も重要な指標の一つであり、お客様がメッセージの内容にどれだけ興味を持ったかを測るバロメーターになります。A/Bテストで最も頻繁に目標とされる指標です。
- コンバージョン率(CVR:Conversion Rate)
- SMS経由でウェブサイトを訪れたお客様が、最終的な成果(商品購入、会員登録、資料請求、予約など)に至った割合を示す指標です。クリック率が高くても、このコンバージョン率が低ければ意味がありません。SMSの文面だけでなく、リンク先のウェブページとの連携も重要になります。
- ブロック率
- SMSを受信したお客様が、その後の配信を拒否(ブロック)した割合です。この数値が高い場合、メッセージの内容がお客様にとって不要、あるいは不快だと思われている可能性があります。長期的な関係を築く上で、このブロック率を低く抑えることもA/Bテストの重要な目的の一つです。
【初心者でも簡単】SMSにてA/Bテストの具体的なやり方5ステップ
ここからは、実際にA/Bテストを行うための具体的な手順を5つのステップに分けて解説します。以下のように進めれば、初めての方でも迷うことなく実践できます。基本的な考え方をお伝えするので様々な場所で活用してみてください。
ステップ1:目的と仮説を決める
まず最初に、「何のためにテストをするのか?」という目的を明確にします。目的が曖昧なままテストを始めても、正しい評価ができません。
目的の例:
- 新商品のセール告知SMSのクリック率を5%改善する
- セミナー案内のSMSからの申込者数を10件増やす
- 休眠顧客向けのSMSでブロック率を1%未満に抑える
目的が決まったら、次に「こうすれば、もっと良くなるのではないか?」という仮説を立てます。この仮説こそが、A/Bパターンの内容を決めるための土台となります。
仮説の例:
- 「本文にお客様の名前を入れた方が、自分ごととして捉えられ、クリック率が上がるはずだ」
- 「限定クーポンであることを強調すれば、お得感が増して申込みが増えるはずだ」
- 「フランクな言葉遣いよりも、丁寧な言葉遣いの方が、企業への信頼感が高まりブロックされにくいはずだ」
「目的」と「仮説」を最初にしっかり言語化しておくことが、A/Bテスト成功の第一歩です。
ステップ2:テストする要素を選ぶ
次に、ステップ1で立てた仮説に基づいて、具体的にSMSのどの部分を変更してテストするのかを決めます。
ここで非常に重要なルールが一つあります。それは**「一度にテストする要素は1つだけにする」**ということです。
例えば、「お客様の名前を入れる」と「クーポンの割引率を上げる」という2つの変更を同時に行ってしまうと、もし成果が上がったとしても、どちらの変更が効果的だったのかが判断できません。
焦らず、一つずつ試していくことが成功への近道です。テストする要素の具体的なアイデアについては、後ほど詳しくご紹介します。
ステップ3:テストパターン(A/B)を作成する
テストする要素が決まったら、いよいよSMSのメッセージを作成します。
- Aパターン: 現在の基準となるメッセージ(コントロール)
- Bパターン: Aパターンの一部を、仮説に基づいて1つだけ変更したメッセージ(バリエーション)
例:クリック率改善を目的としたテストの場合
- 仮説: 「限定性をアピールすればクリック率が上がるはずだ」
- Aパターン(コントロール): 〇〇様、夏の新メニューが登場!人気の冷製パスタをぜひお試しください。詳細はこちら→ https://example.com/a
- Bパターン(バリエーション): 〇〇様、【本日限定】で夏の新メニューが登場!人気の冷製パスタをぜひお試しください。詳細はこちら→ https://example.com/b
このように、AとBの違いが「【本日限定】」という一言だけになるように作成します。URLは、必ずAパターンとBパターンでクリックを区別して計測できるよう、異なるもの(またはパラメータを付けたもの)を設定しましょう。
ステップ4:テスト配信と効果測定
メッセージの準備ができたら、いよいよ配信です。
多くの法人向けSMS配信サービスには、このA/Bテストを簡単に行うための機能が搭載されています。配信リストの中からテストに使用する割合(例:20%)を指定し、A/Bのメッセージを登録すれば、あとはシステムが自動でリストを半分に分けて配信してくれます。
??SMS配信ツールの管理画面で、A/Bテスト設定を行っている様子のスクリーンショット画像。「Aパターン入力欄」「Bパターン入力欄」「テスト配信対象の割合設定スライダー」などが表示されている??
もし手動で行う場合は、配信リストの一部(例:2000件のリストのうち200件)をランダムに抽出し、さらにそれを100件ずつに分けてAとBのメッセージを配信します。
配信後は、あらかじめ決めておいた期間(例:24時間後、3日後など)、結果を計測します。
ステップ5:結果の分析と本格配信
テスト期間が終了したら、結果を分析します。AパターンとBパターン、それぞれのクリック率やコンバージョン率を比較し、どちらが優れていたかを評価します。
例:テスト結果
パターン | 配信数 | クリック数 | クリック率 |
---|---|---|---|
Aパターン | 100件 | 8件 | 8.0% |
Bパターン | 100件 | 15件 | 15.0% |
この場合、明らかにBパターンの方が高いクリック率を記録しており、「限定性をアピールするとクリック率が上がる」という仮説は正しかったと判断できます。
この結果に基づき、残りの大多数のお客様(例:リストの残り80%)には、成果の良かったBパターンのメッセージを配信(本格配信)します。これにより、配信全体の成果を最大化することができるのです。
また、このテストで得られた「限定性をアピールすると反応が良い」という知見は、次回のSMS配信や他のマーケティング施策にも活かせる貴重な財産となります。
成果に直結!A/Bテストで比較すべき7つの要素
「テストのやり方は分かったけど、具体的に何を比較すればいいの?」という疑問にお答えします。ここでは、成果に直結しやすい代表的なテスト要素を7つご紹介します。ぜひ、貴社の次のテストの参考にしてください。
1. 冒頭の呼びかけ
メッセージの冒頭、お客様への呼びかけ方は第一印象を左右する重要な要素です。
- Aパターン: 【〇〇ストアより】
- Bパターン: 〇〇様へ
- 比較のポイント: 企業名を出すか、個人名で呼びかけるか。お客様はどちらに「自分へのメッセージだ」と感じるでしょうか。パーソナライズされた呼びかけは、開封後の精読率を高める効果が期待できます。
2. 本文のトーン(言葉遣い)
企業やブランドのイメージに合わせて、メッセージのトーンを調整します。
- Aパターン: 新商品が入荷いたしました。ぜひご覧くださいませ。(丁寧)
- Bパターン: 新商品が入荷しました!ぜひチェックしてみてね♪(フランク)
- 比較のポイント: ターゲット顧客の年齢層やブランドイメージによって、最適なトーンは異なります。アパレルブランドならフランクな方が、BtoBサービスなら丁寧な方が好まれるかもしれません。
3. 絵文字・記号の有無
テキストばかりのメッセージに彩りを加え、視覚的にアピールします。
- Aパターン: 特別セール開催中!詳細はこちら…
- Bパターン: ✨特別セール開催中!✨詳細はこちら👉
- 比較のポイント: 絵文字や記号は、メッセージを目立たせ、感情を伝えるのに役立ちます。ただし、多用しすぎると逆に読みにくくなったり、不誠実な印象を与えたりする可能性もあるため、バランスが重要です。
4. URL(短縮URL)の見せ方
クリックしてもらいたいURLの表記方法も、クリック率に大きく影響します。
- Aパターン: 詳細はこちら→ https://shr.jp/abcd
- Bパターン: ▼セールの詳細はこちらをタップ https://shr.jp/abcd
- 比較のポイント: 短縮URLをそのまま見せるか、説明文を添えるか。あるいは改行を入れてURLを目立たせるか。少しの工夫で、クリックへのハードルを下げることができます。
5. 行動喚起(CTA)の文言
お客様に取ってほしい行動を、具体的かつ魅力的な言葉で促します。
- Aパターン: ご予約はこちら
- Bパターン: 30秒で完了!簡単WEB予約はこちら
- 比較のポイント: 「簡単」「限定」「無料」といったキーワードを使い、行動することで得られるメリットや手軽さを伝えることで、クリック率は大きく変わります。
6. 配信する曜日・時間帯
お客様がスマートフォンをチェックしやすい時間帯を狙う、古典的かつ効果的なテストです。
- Aパターン: 金曜日の20時(仕事や学校が終わりリラックスしている時間)
- Bパターン: 月曜日の12時(ランチタイム)
- 比較のポイント: 扱う商材やターゲット顧客のライフスタイルによって、最適な配信時間は異なります。BtoB向けなら平日の業務時間内、飲食店なら週末の前などが考えられます。
7. 特別感の演じ方
「あなただけ」「今だけ」という限定性を伝えることで、行動を後押しします。
- Aパターン: お得なクーポンを配布中です。
- Bパターン: 〇〇様だけにお届けする【限定クーポン】です。
- 比較のポイント: 同じ内容でも、伝え方一つで価値の伝わり方は変わります。「会員限定」「タイムセール」「先着〇〇名」など、様々な切り口で特別感を演出してみましょう。
A/Bテストを成功させるための3つの注意点
最後に、A/Bテストで失敗しないための重要な注意点を3つお伝えします。
1. 一度にテストする要素は1つだけにする
先ほども触れましたが、これはA/Bテストにおける鉄則です。例えば、「呼びかけ」と「CTAの文言」を同時に変更したBパターンで良い結果が出ても、呼びかけが良かったのか、CTAが良かったのか、原因を特定できません。これでは、次につながる知見が得られず、非常にもったいないです。焦らず、地道に一つずつ検証していきましょう。
2. 十分なサンプルサイズでテストする
例えば、A/Bそれぞれ10人ずつに配信して、Aが1クリック、Bが2クリックだったとします。この結果を見て「Bの方が2倍効果的だ!」と判断するのは早計です。これは単なる偶然の可能性が非常に高いからです。
テスト結果の信頼性を高めるためには、ある程度の配信数(サンプルサイズ)が必要です。統計学的に有意な差を求めるのは複雑ですが、一つの目安として、各パターンで最低でも数百件以上、できれば1,000件以上のリストに対してテストを行うことが望ましいです。
3. テストは繰り返し行う
A/Bテストは、一度やって終わりではありません。市場のトレンドやお客様のニーズは常に変化しています。一度成功したパターンが、未来永劫ベストであり続けるとは限りません。
成果の良かったBパターンを次のAパターン(基準)とし、また新たな仮説(Bパターン)を立ててテストする…という改善のサイクルを回し続けることが重要です。この継続的な改善活動こそが、競合他社に差をつけ、SMSマーケティングの効果を最大化し続ける秘訣です。
まとめ

今回は、SMSマーケティングの効果を飛躍させる「A/Bテスト」について、その基本から具体的な実践方法、成功のコツまでを詳しく解説しました。
最後に、この記事のポイントを振り返ってみましょう。
- A/Bテストは、2つのパターンを比較して「より成果の出るSMS」をデータに基づいて見つけ出す手法。
- 目的と仮説を明確にし、「1度に1要素だけ」を変更するのが成功の鍵。
- 呼びかけ、CTA、配信時間など、テストすべき要素は様々。
- 一度で終わらせず、改善のサイクルを回し続けることが重要。
A/Bテストは、決して難しい専門家のためのものではありません。一つひとつのテストは小さな改善かもしれませんが、その積み重ねが、やがてクリック率やコンバージョン率の大きな向上につながります。
「なんとなく」の配信から卒業し、データに基づいたSMSマーケティングを始める準備はできましたか?
まずは今回ご紹介した7つの要素の中から、一番試してみたいものを一つ選び、次の配信でさっsくテストを始めてみましょう。その一歩が、貴社のビジネスを大きく前進させるはずです。
多くの法人向けSMS配信サービスには、本記事で解説したA/Bテストを簡単・自動で行える機能が備わっています。こうしたツールを活用することで、担当者様の負担を軽減しつつ、効率的に成果を最大化することが可能です。
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